2025/03/12 17:02

商店街の片隅に、ひっそりと佇むアパレルショップがある。その名も「ねむけ」。

一見すると普通の可愛いカジュアルウェアを扱う店なのだが、この店にはひとつだけ特別な点がある。それは、店長がハトなことだ。

いや、正確には「頭がハトで、体は人間の店長」だ。

白いシャツにゆるっとしたエプロンを着けたその姿は、一見するとただの優しいアパレル店員なのだが、顔を上げると見事なハトの顔がそこにある。黒い目はつぶらで愛嬌があり、くちばしの動きに合わせて彼の声が響く。

「クルルル……いらっしゃいませ。今日はどんな気分ですか?」

店長の接客は、実にのんびりしている。お客さんが試着している間も、レジに立ちながら日向ぼっこをしていたり、時々窓の外を見てぼんやりしたり。だけど、服選びのアドバイスは的確で、「このスウェット、羽織るとふんわり包まれる感じがするのでリラックスできますよ」と、実際に羽根があるかのような表現をするのが特徴だ。

店内には、ゆるっとしたデザインのパーカーやTシャツ、やわらかい素材のワンピースやキャップが並んでいる。全体的にリラックスできるアイテムが多く、ハトの刺繍や「クルル」と書かれたロゴ入りの服も人気商品だ。

「ねむけ」は、どこか時間がゆっくり流れるお店。お客さんたちは「また来たくなる」と口をそろえて言う。

ある日、常連のお客さんが「クルタさんって、どうしてアパレルショップをやってるんですか?」と尋ねた。

クルタさんは少し考えてから、クルル、と小さく鳴き、 「羽ばたくように、自由に着るのが好きだからですよ」と答えた。

今日ものんびりした時間が、ねむけに流れている。